「またぜひ受けたい」 メディカルイラストレーターが指導する医師のためのイラスト講習、北里大学にて開催
「またぜひ受けたい!」メディカルイラストレーション専門の制作会社だからこそができるアンケート回答者全員が再受講を希望するメディカルイラストレーションの描き方スペシャルレッスン!
L&Kメディカルアートクリエイターズ株式会社(本社:埼玉県東松山市、代表取締役社長:佐久間研人)は、メディカルイラストレーションの技術を身近に感じてもらうための「LKMACエデュケーション」事業を開始し、その第1弾として令和4年5月14日(土)に北里大学医学部外科の医師を対象とした「医師のためのメディカルイラストレーション講習」を開催いたしましたので、その内容や事後アンケートの結果などをご報告いたします。
日 時:令和4年5月14日(土)13:00~17:00
場 所:北里大学病院内講義室
講 師:レオン佐久間
参加者:15名(北里大学医学部一般・消化器外科講座の医師、他)
外科医×メディカルイラストレーション ~実現までの経緯~
医療情報を的確に伝えるためのメディカルイラストレーション(以下、MI)。日本においてMIを専門に描くメディカルイラストレーター(以下、MIr)の数はとても少ない。その数少ないMIrを集め、ニーズに適したMIを提供する会社「L&Kメディカルアートクリエイターズ株式会社」(以下、LKMAC)がこのたび、医師を対象としたイラスト講座を開催し、好評を博した。
<外科医にイラストは必要なのか?!>
手術をした際には記録として、「手術を行った医師の氏名」「患者の氏名等手術記録をそれぞれ識別できる情報」「手術を行った日」「手術を開始した時刻及び終了した時刻」「行った手術の術式」「病名」を記載した『手術記録』を残さなければならない *1。この手術記録を残す際、自分の手術をよりわかりやすく解説するために、文章に術式の図を付与することはとても有用であるため、イラストや術中写真が用いられる。
たとえ同じ術式であっても、実際の手術内容は患者ごとに細かく異なってくる。そのため、教科書や解剖学書にある定型のイラストを流用しても、適切に要点を指し示すことは難しい。術中写真は手術を説明するために有用な図となり得るが、手術中の一場面を切り取ったものであり、表面に映っているものしか見えない。そのため、写真の画角外や構造物に隠れている部分を伝えたい場合には写真は適さない。
そこで、本当に伝えたい部分のみを強調し、不必要な部分を省略し、写真では写らない部分も描画できる「イラスト」が重宝されるのである。
<外科医がイラストを学ぶ機会がない>
医師がイラストを学ぶ機会は、本人の意志によるところが大きい。というのも、現状、医師がイラストを学ぶ制度が整っていないのである。例えば、文部科学省が示す『医学教育モデル・コア・カリキュラム』内には、イラスト描画に関する記載は一切ない*2。体系立てたイラスト教育がないため、外科医になった医師は、必要に迫られ独学で、もしくは先輩に教わりながら、経験則で培ったものを「なんとなく見様見真似」で描いているという。
イラストに興味がある医師は、個人的に美術教室やイラスト通信講座などで学ぶケースもあるようであるが、基本的には医師がイラストを学ぶ標準的な教育がないことから、イラスト描画の技量については個人の資質と意識によってばらつきがあるといえる。
<イラストを学びたい外科医とMIを広めたいMIrがつながった!!>
「なくて当たり前を使って当たり前に! メディカルイラストレーションが身近になり、だれもが同じ理解をもって、医療に向かい合える世界」を目指すLKMACは、MI教育の方向性を模索するため、「第34回日本内視鏡外科学会総会」内の医工連携企画に参加出展をした*3。そこで出会った方が北里大学医学部下部消化管外科学教授の内藤剛先生である。
「絵のうまい医師に、手術が下手な者はいない」とイラストの重要性を強く感じられていた内藤先生とMIを広めたいLKMACが出会ったことで、医師のためのMI講習の開催に向けて大きく動き出したのである。
- 実施プログラム ~外科医が学ぶMI、その方法~
「自らのオペや治療を絵(イラスト)に残すことを文化としたい」
日本中の医師にこのような文化を残すことができれば、よりわかりやすい記録が残ることとなり、医療の発展に大きく寄与することができると考える。
<イラストをうまく描くことが目的ではない!>
先に述べたように、これまで体系立てたイラストの勉強をする機会のなかった外科医たちである。個人の興味やきっかけの有無によって、イラストに対する得手不得手も違い、それぞれ学びたいと思うところも異なっていることが予想された。
そこで注目したのが「体系立てたイラストを勉強する機会」を示してみるということである。基礎的な技法やとらえ方を示すことで、イラストが得意な人にとっては新たな気づきにつながり、苦手な人にとっては描き始めるきっかけになるのではないかと考えた。そこで「描けない人は『俺(私)描けるじゃん!』という達成感が、描ける人は『もっとうまくなれるかも!』という期待感が得られ、だれもが抵抗なくイラストを描けるようになる」ことを目標として、講座をプログラムした。
- 講義内容
講師はMIrの第一人者であるレオン佐久間氏が担当。またアシスタントを当社のMIrである「由(yoru)」が務め、参加者の疑問・質問についての対応や個別アドバイスなどきめ細かな対応を行った。
<イラスト描画手法>
今回の講習は、えんぴつを用いた手描きとした。えんぴつはだれもが扱ったのことのあるなじみのものであり、講師であるレオン佐久間氏の最も得意とする描画ツールである。今回はおなじみのえんぴつと、通常なかなか使うことのない紙擦筆やねり消しなどの道具を使い、レオン佐久間氏の描画技術の一端を体験してもらった。
メディカルイラストレーションとは/描く時の姿勢/線の描き方/アタリとは…etc
イラストの基本的な描画方法についての講義を行った。レオン佐久間氏がMIを描く際のMIrの視点や技術を自らのイラストとスライドで披露すると、参加者は真剣な表情で耳を傾けた。
2.メディカルイラストレーション実習
ハッチングテクニック/ワイヤーフレームを使った描画法/大腸を描いてみよう…etc
前半の講義を終え休憩をはさんだのちに、いよいよ前半の講義内容を生かしたイラスト描画実習が始まった。まずは直線をまっすぐ均等に引いて陰影をつけていくハッチングテクニックで陰影と光の関係を学んだ。
その後は、カーボンダストテクニックを用いて球体の陰影や奥行きを表現する方法を実践し、最後は大腸を描いていくこととなった。普段持つメスをえんぴつに代えて、紙に向かい合う医師たち。講義を経て、実習が進むにつれ、イラスト表現の向上が見られた。
3.デジタルツールでの応用
講習の最後には、アシスタントを務めたLKMAC専属MIrの「由(yoru)」による、デジタルツールを用いての描画ライブドローイングのデモンストレーションが行われた。えんぴつを用いて教わってきた講習の技術を応用しながら、わずかな時間で描き上がっていく大腸を目前に、たびたび参加者からは感嘆の声がもれた。
解説とともに進む描画を食い入るように見る先生方
- MI講習のこれから~講習を終えて~
アンケートでは、講義内容・実習内容ともに好評であった。コメントとしては、「非常に勉強になりました。次回も企画よろしくお願いいたします」「次回もあったら参加したいと思います」という声や「特にワイヤーフレームは知りたかった概念だったので、悩みが解決しました」「非常にためになりました。シェーマが我々の基本なので、そこに色々還元できる内容でした。外科医になって22年目ですが、参加して良かったです」という講習自体への満足の声が挙げられた。
次回以降の開催については、「次回講座を開催した場合、参加したいと思いますか」という問いに対し、すべての回答者が「はい」と答えた。次回開催のテーマとしては、今回に引き続き鉛筆でのイラスト基礎講座とデジタルツールを用いたイラスト講座の希望が大半を占めた。これを受けて、現在LKMACは北里大学での第2回のMI研修の準備を進めている。
アンケート結果については下記URLにてダウンロード可能
https://prtimes.jp/a/?f=d92082-20220531-2b622a829c4bb006b6580ed298ce5796.pdf
<LKMACエデュケーションの今後の展開について>
LKMACは、MIを広く伝え、臨床の場で生かしてもらいたいと考えており、今回北里大学でMI講座を行えたことは、その第一歩として大変価値のあるものだと考えている。今回はえんぴつを用いたMIの基礎講座であったが、LKMACではほかにも、デジタル描画ソフトを使用した描画方法や日々の臨床のちょっとした場面で役立つボールペンを使った描画方法などのMI教育プログラムを「LKMACエデュケーション」事業として、ニーズに対応した形で提供していく予定である。今回を機に多くの医療機関でMIを学ぶ機会を提供できれば、MIの周知とともに先生方の日々の診療に寄与できるのではと期待している。
「LKMACエデュケーション」についての問い合わせや開催希望の申し込みは、LKMACホームページのお問い合わせフォーム、もしくは、LKMACが運営するMIの総合サイト「メディカルミュージアム」のお問い合わせフォームから随時受け付けている。
reference
*1 医療法施行規則第1条の10第5項. e-gov法令検索. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323M40000100050 (accessed: 2022/5/22)
*2 モデル・コア・カリキュラム改訂に関する連絡調整委員会、モデル・コア・カリキュラム改訂に関する専門研究委員会:医学教育モデル・コア・カリキュラム;平成28年度改訂版. 文部科学省, 2017. https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/06/28/1383961_01.pdf (accessed: 2022/5/22)
*3 「第34回日本内視鏡外科学会総会の医工連携企画ブースに出展いたしました」. LKMACHP. https://www.lkmac.jp/news/13073.html (accessed: 2022/5/22)